《里の入居者が文芸賞を受賞》

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 入居者のHさんが文芸賞を受賞されました。Hさんは一昨年、娘さんと一緒に近隣の市から里に入居された方です。私は娘さんと里バスの中での会話を通して、ご自身が入居早々、重篤な病に罹ったことを知りました。娘さんは厳しい手術を耐え抜き、いまではほぼ全快されていますが、母親のHさんが「娘の闘病記」をエッセイ(随筆)として綴り、それが文芸賞を受賞したのでした。エッセイは「『団子ちゃん』は何者?」というタイトルで、文芸誌『文芸思潮』(アジア文化社)の2024年秋第93号(第19回文芸思潮エッセイ賞発表号)に掲載され(写真1:同誌の表紙)、「エッセイ賞優秀賞」の一編に選ばれました。Hさんは昨年の10月に東京で開かれた授賞式に娘さんと一緒に参加し、エッセイ賞メダルを頂いたそうです(写真2:同メダル)。

文芸賞受賞.jpg

 エッセイでは、回復を願う母親の心境とともに、娘さんの発病から全快までの様子が、鋭い観察力で淡々と描写されています。その記述内容によると、コロナワクチン接種後、娘さんの股関節付近に脂肪肉腫ができ、それは急速に大きくなって、悪性が疑われるようになりましたが、もと教員の娘さんは肥大した腫瘍を「団子ちゃん」と呼んで、「団子ちゃん、いい子だね。おとなしくしててね」と教え子を慈しむように、2年間見守り続けました。しかし最終的には、娘さんは手術を受ける決断をし、4時間にも及ぶ手術の結果、腫瘍は除去され悪性ではないことも判明しました。Hさんはその過程を、娘さんが教え子を気遣うような表現で、「団子ちゃんはお行儀が良かったんだね。素直な子だったんだね」と見事に描写しています。そして手術の成功を、「団子ちゃんは無事卒業してくれた」という表現で結んでいます。(エッセイ賞選考委員の五十嵐勉氏は選評で、このように擬人化した表現を高く評価しています)。

 私はエッセイを読ませて頂き、Hさんの筆力の素晴らしさに感動しました。私には思いつかない豊かな表現がエッセイの至る所に鏤められています。Hさんは92歳のご高齢で、若い頃からエッセイの執筆がご趣味のようで、これまでに同人誌で何回も受賞なさっているとのことです。里にこのような方がいらっしゃるのは、入居者にとって名誉で嬉しいことです。これからも是非、素晴らしいエッセイを書き続けられることを期待しています。 

(入居者 H.T.)

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